瞑想・学習・能力アップ・潜在意識の開発 ブレインマシン ―ボイジャー・エクセル―

 瞑想を助けるテクノロジー ~ブレインマシン ~

瞑想をするとき、みなさんはどのようにされていますか。

本やネットで得た情報をもとに、
ひとりで試されている方も多いでしょう。
誘導瞑想CDや瞑想音楽CDを利用すると集中しやすいので、
愛用している方もおられると思います。
ひとりでは難しいので、瞑想セミナーや瞑想会を探して、
行かれる方もいるでしょう。
瞑想をする場所や時間帯などを決める、自分の中で儀式を決めて行うなど、
瞑想モードに入りやすいよう、
アンカリングを利用されているかもしれません。

瞑想の有効性を理解している、また実感もしているので、
瞑想を実践していきたい。
けれど「集中できない」「眠くなる」などの理由から難しく、
実践のために、色々と工夫されていることと思います。
 

古来の瞑想では、機械的なものは使われていませんでしたが、
“聖なる場所で瞑想をする” “炎をみつめる”
“太鼓のリズムに合わせながら動き、集団で瞑想する” など、
自然と深い意識に入りやすいような、
工夫がなされていました。
 

近代になると、科学的なテクノロジーを利用した、
深い意識に入るための研究もなされるようになりました。
脳や精神状態を、望む方向へと導くためのマシンを、
ここでは「ブレインマシン」と呼びます。

ブレインマシンはどのように研究・開発されてきたのかを、
お伝えしていきます。

 

脳波の発見

1920年代、ドイツの神経科学者であり、精神科医である、
ハンス・ベルガー(Hans Berger)は、人の頭皮に電極を付けて、
初めて人間の脳波を観測しました。

 

ハンス・ベルガー(Hans Berger, 1873 ~ 1941)出典

 
 
ベルガーは、脳波を研究する中で、
大まかに

四種類の精神活動と、脳波が一致している

ことを発見しました。

◆人が活動している時に脳波を測ると、1秒間に、13回以上の山と谷が記録されます。(13ヘルツ以上~)
これを、ベルガーは、 β(ベータ)波 と名付けました。

(ベルガーの記録した脳波より)出典

 
 
◆入眠時(睡眠に入る前のウトウトした状態)には、1秒間に、8 ~ 12ヘルツの脳波が出ていました。
それを α(アルファ)波 と呼びました。

ベルガーによって、アルファ波が発見されたこの時点では、
入眠時にだけアルファ波が出ると思われていました。

 
 
◆夢を見ており、眼球が動いているとき(レム睡眠時)には、4 ~ 8ヘルツの脳波が観測されました。
それを θ(シータ)波 と呼びました。
 
 
◆夢を見ていない熟睡時(ノンレム睡眠時)の脳波は1 ~ 4ヘルツで、 Δ(デルタ)波 と呼ばれました。
 

ベルガーの
「人の精神活動状態と、脳波が一致している」
という発見によって、
今までは曖昧で、科学的には捕らえられなかった脳の活動を、
客観的に観測することが可能となったのです。

 

この発見以降、脳波をモニターして、神経症などの病の治療に役立てる研究がなされました。
 

 

瞑想とアルファ波

1950 ~ 60年代、ヒッピー文化が隆盛を極めていた頃、
向精神薬のLSDが偶然に開発され、LSDを使用した人たちが、
啓示やインスピレーションを得る中で、
独自のカルチャーが立ち上がってきました。

音楽シーンで有名なのは、ビートルズ。
今までとはちがう革新的な音楽を生み出したのはご存じの通り。
アート絵画シーンでは、LSD体験の幻視を再現した
極彩色のサイケデリックアートが生まれました。

 

(pixabay)

 

この時代の先端にいる者たちは、
こぞって内面にインスピレーションを求めたのです。
反体制や物質主義の反動から生まれたヒッピー文化は、
精神性を重んじるムーブメントとなっていきました。

そこでヒッピーたちは、封建的なキリスト教から離脱する者も現れ、
インドから来た瞑想(マハリシのTM瞑想など)や、
日本の禅(鈴木大拙など)にも傾倒していったのです。
 

鈴木大拙

 

瞑想が流行したこの時期、脳波の研究も盛んに行われました。
アメリカの研究者、ジョー・カミヤは、禅僧の脳波を調べました。

すると、瞑想中にアルファ波が検出されました。
カミヤがこれを発表したところ、当時の常識から外れていたため、
最初は学会でも懐疑的に受け止められたのです。

当時は「アルファ波は、入眠時のウトウトしている状態で観測される脳波。
瞑想中は起きている状態なのに、アルファ波が出るはずがない」
…と考えられていたのですが、追試実験によってサンプルが増え、
常識も変わりました。
 

また、脳波を計測しながら、被験者がどのようなことをすれば、
アルファ波が優位になるかを探る研究が盛んになりました。
意識を積極的にコントロールしていく時代の幕開けです。

その結果、呼吸を整えたり、リラックスする情景を思い浮かべたりすることで、
アルファ波が現れる状態を作れることがことが解ったのです。
 

こうして、ストレスの多い緊張過多の人でも、
アルファ波を自分で出せるコツがわかって、
リラックスできるようになりました。
神経症状を持つ人でも、
瞑想によって、症状が飛躍的に改善されるようになったのです。
 
 

 

バイオフィードバックで、アルファ波を効果的に出す

被験者が、脳波や、皮膚の電位といった精神状態と密接に関連する
「生理的な状態」をモニターしながら、
集中やイメージを変化させて、より望んだ精神状態に近づけるシステムを、
「バイオフィードバック」と呼びます。

フィードバックというのは、出力を入力に戻して入出力のループを作り、
全体をコントロールするシステムのことを言います。
 

初期のバイオフィードバック装置は大がかりで、
研究所などでしか、体験できないものでした。
しかしテクノロジーの進歩により、小型化し、
一般の人でも入手可能な価格で販売もされるようになりました。
 

自分ひとりで脳波をモニターしながら瞑想をするのは、
目を開けなければモニターできないという面からも
難しいところがあります。

そこで、目を瞑って瞑想する人にも精神状態をモニターできるように、
皮膚の電気抵抗(GSR)を調べて、リラックスした状態になると、
ヘッドフォンから音が聞こえるという機器も現れました。
 

GSR

皮膚の電気抵抗を調べるGSRは、比較的小型で、安価でした。

リラックスすると身体がポカポカしてきますが、
これは、血管が広がり毛細血管の血液の量が増えるからです。
その状態では、皮膚の電気抵抗は下がっています。
これをセンサーで捕らえて、ある一定の電気抵抗値に下がったときに、
音が鳴るようにする仕掛けでした。
 

心拍数、脳波、皮膚の電気抵抗などをモニターして、
アルファ波が出ているとき――
つまり「落ち着いて集中している状態」を知る(フィードバックする)ことができると、
おのずとコツをつかみ、その状態を再現・継続できるようになります。

つまりリラックス、集中、より深い意識状態へと入ることなどを、
コントロールすることが可能になるのです。
 

バイオフィードバックでアルファ波を出すと、スポーツの記録が伸びることから、
プロのゴルファーにも使われはじめました。

さらに、学習にも役立つことから、アルファ波が出る状態で語学を学習する
「加速学習」と呼ばれる新たな学習法も、この時期に確立されました。
 

この頃には、一般にも入手可能な値段で、
バイオフィードバックを含め、
精神活動状態のコントロール効果のある、様々なブレインマシンやシステムが、
他にも開発されていきました。
 
 

 

精神状態に働きかけ、集中し、深い意識に入っていくことを目的とした装置として、
有名なものに「フローテーション・タンク」があります。

外光や音を完全に遮断するタンクの中で、体温と同じ温度の水溶液の中で横になって、
プカプカと浮かぶための装置です。
音や光といった外部からの刺激を一切断ち、体温と同じ温度の水溶液に浮かぶことで、
温度や重力さえも感じない世界を体験します。

そのとき脳は、様々な外部刺激を処理する必要がないという、特殊な状態になります。
その結果、意識が内側の奥底へと向かうことが容易になります。
 
 

 

ロバート・モンローらは、
音による、脳の“周波数追従反応”を発見しました。

音の刺激によって、脳の周波数を誘導することが可能

であると分かったのです。
そしてその反応を利用した「ヘミシンク」と呼ばれるシステムを開発しました。

脳をシータ波でシンクロナイズさせたいときは、
片方の耳から400Hzの信号を送り、
もう片方の耳から404Hzの信号を送ると、
バイノーラルビートによって、
脳全体の周波数を4Hzに変化させることができるというものです。
 

脳は通常、右半球と左半球のどちらかが優位になって活動をしています。
しかし、脳が音の周波数に追従することにより、
脳全体が同じ周波数で統合された状態になる
ことが明らかになりました。

「脳の両半球のシンクロナイゼーション」

と呼ばれる状態です。
 

モンローはこの「ヘミシンク」というシステムにより、
体外離脱等の“精神が肉体から解き放たれる”ことによる、
精神変容を目指しました。
 

 

光の点滅に脳波が追従する

「音の周波数による脳波誘導」研究される一方で、
「光の点滅による脳波誘導」も盛んに研究されていました。

時は1930年代、W・グレイ・ウォルター(William Grey Walter)は、
脳波をコントロールするために、外部の規則的な刺激を用いました。

ウォルターが点滅光を、被験者のまぶたに当てました。
すると、点滅光の周波数に、脳波が追従していく様子が、
脳波計に記録されたのです。

 

William Grey Walter

 

1930年代の一般的な電球では、現在のLEDのように
反応の早い速度で点滅させることができませんでした。
ウォルターは、大がかりになりますが、
写真に使われるキセノンガスのストロボ光を使って、
早い点滅光を作り出していたのです。

例えば、被験者のまぶたに、1秒間に10回の点滅光を当てたとします。

すると、後頭部の視覚野に1秒間10回、つまり、10ヘルツの脳波が現れ、
さらに、しばらくすると、脳全体に10ヘルツの脳波が現れてきます。

秒間10回の脳波は、アルファ波の帯域です。
こうして、脳全体はアルファ波になるのです。

これを、

脳波のエントレインメント

(entrainment:引き込み・同調)、
または

「脳の周波数同調現象」

とも呼びます。
この現象を利用すると、プログラムされたとおりに
脳波を誘導することが可能になります。
 
 


 

 

ブレインマシン「ボイジャー」誕生

「点滅光」も「音の周波数」によっても、
それだけで脳波誘導でき、
「脳の両半球のシンクロナイゼーション」も起こせることが
明らかになりました。
特に光による脳波誘導は、音の誘導よりも効果が大きく、
時間的にも持続しました。

そこで研究者たちは
「点滅光とリズミカルな音を、同じ周波数で同時に刺激を与えれば、
より効果的に、脳波を誘導できるのではないか?」
と考えました。
 

音による脳波誘導は、先に触れた「バイノーラルビート」以外でも、
リズミカルななカチカチ音、
パルス音を周波数の間隔に合わせて鳴らすことなどでも、
可能であることがわかっていました。
 
 

1962年、ニック・ホロニアックが赤色LEDを発明し、
70年代には赤、黄、オレンジ、黄緑などの各色LEDが誕生しました。
電圧のON・OFFに瞬時に反応するという、
画期的なLEDが発明されたのです。

こうして、光の点滅によって脳波をコントロールする
「ライト&サウンドマシン」が開発される準備が整いました。
 
 

ちょうど70年代からICの集積化はさらに進み、
販売当初は鞄ほどの大きさだった光の点滅を使ったマシンも、
80年代の半ばには、手のひらサイズまで小型化されていきます。
発売当時の鞄ほどの大きさの装置は、
約50万円ほどで販売されていました。
 
 

その後、現在のボイジャー・エクセル・プロテウスを製造している、
当時のシネティックシステムズ社(現マインドプレイス社)が、
20万円代半ばで様々な機能が付いていているマシンを販売し、
一気に世間へ広まっていきました。

当時のシネティックシステムズ社が出したマシンは、
パラメータを調節することができ、
様々な周波数にセッティングできるという意味で、
非常に画期的なマシンでした。
 


 

小型化して、より高度に進化する

その後、脳波とピーク・パフォーマンスの研究が進み、
「最高のパフォーマンスを発揮しているときの脳波」を
シミュレートしたプログラムが、
ボイジャーに内蔵されるようになりました。

多くのプログラムが内蔵され、
自分で望む周波数のプログラムも作れるようになるなど、
機能はより向上していき、
大きさはトランプケース大にまで小型化しました。
これは、ICの進歩によるマイコン搭載の恩恵です。
 

こうして、瞑想状態と脳波には密接な関係があるという発見、
光と音のリズムに脳波が同調していくという発見などから、
ボイジャー・エクセルは開発されました。

 

 

冒頭で、瞑想をひとりで行うのは難しい面もあり、
人々は古来から様々な工夫をして、
瞑想をしてきたと述べました。

瞑想は、願いを叶える、自分を変える、集中、
ピーク・パフォーマンス、リラクゼーション、
インスピレーション開発など、
様々な目的に役立つツールです。
 

「厳しい修行をしないと瞑想はできない」
「雑念を払って、座禅を組まなければいけない」
 …等のイメージを、
 持たれている方もいるかもしれません。

しかし、

ブレインマシンの登場により、
瞑想に対して「ハードルが高くてできない」という
懸念を持つ必要がなくなりました。

 

人生をより豊かにしていくための瞑想。
それを容易に、かつ効果的に行うために開発されたブレインマシンの歴史、
ライト&サウンドマシンの開発にまつわる歴史について、
お伝えしました。
 

様々なブレインマシンやその歴史に興味のある方は、
書籍「メガブレイン」(総合法令出版)
マイケル・ハッチソン著/佐田弘幸監訳/福留園子訳
を、ぜひご覧ください。